オペラ “ラ・ボエーム”

芸術・伝統

みなさま、いかがお過ごしですか。新型ウィルス、一刻も早く収束することを心の底から祈っております。

お天気が良いのに散歩に出かけられないなんて嘆かわしい…カフェで読書を習慣にしよう!と素晴らしい決心をした矢先、3密空間は避けるようにだなんて、悲しすぎる!
今はとにかく自宅にこもって、おさぼりしていたブログをがんばりなさい、と地球に言われているようです。

さて、今回はというと、1月に見たオペラ、”ラ・ボエーム”のお話をしようと思います。

こちらは1830年代のパリが舞台で、芸術家の卵たち(詩人、画家、音楽家、哲学者)が屋根裏部屋で共同生活をしている場面から始まります。
貧しくもユーモラスで自由な暮らしを謳歌する若者たち…ある風の冷たい夜、画家である主人公のロドルフォは、可憐なお針子ミミと恋に落ちます。
“外を歩いていたのだけれど、風で蝋燭の火が消えてしまって…火をわけてくださいませんか”
快く自宅に招き入れ、火をわけ与え彼女を見送ると、あら不思議、再びドアをノックする音が。

“自宅の鍵を、この家に忘れてしまったみたいなの。どこかに落ちていないかしら。”
鍵を探し始めるロドルフォとミミ。風がそっと炎を奪い、暗い部屋、手探りの中、二人の手が触れ合い…
“なんて冷たい手!温めさせてください。暗闇で探しても、鍵なんて出てきません。しかし幸いにも、今宵は月夜。月は私たちのそばにある…”
可愛らしい恋のはじまり。この場面に、すごくときめきました。

クリスマスイヴの街中、カルチェ・ラタン通りは大賑わい。画家マルチェッロと元恋人ムゼッタの一悶着あり、活気ある街の再現良し、舞台転換の素晴らしさ花丸!ミミとロドルフォも皆と楽しいひと時を過ごしますが、ここから幸せな二人に暗雲が立ち込めます。

“ミミの体が病に侵されている…”

それなのに、自分は日に日に弱っていく彼女を見守ることしかできない。自分は”ボヘミアン”で、その日暮らしで、金がなく、ミミに十分な治療を施してやることができない。
ロドルフォは初めて自分の不甲斐なさと対峙するのです。彼女を想い、自分の気持ちに嘘をつき、別れ話をするロドルフォ…彼の態度が急に変わって、ミミも大きく戸惑います。そのすれ違いがとても悲しい。オペラにしては珍しく純愛なのに。観ているこちらまでつらくなります…

彼の愛を強く信じ続けるミミ。心とはうらはらに、蝕まれていく体。最期に、彼に会いたい。ミミは、ムゼッタによって、ロドルフォと出会ったあの屋根裏部屋へと運び込まれるのです。

“あの夜、二人必死に鍵を探して…でも、あなた、鍵なんてすぐに見つけていたのよね?”
愛おしい思い出を、愛おしい彼と語らい、やはり本当は彼に愛されていたことがわかると、安堵の表情を浮かべるミミ。心に蘇るぬくもりを感じたのも束の間、あの夜の灯火のように、風がそっと、ミミの生命の炎を奪うのでした。

心が苦しくなるような恋のお話は、久しぶりでした。素晴らしい舞台をありがとうございました。
これは一度見ておくべき、素晴らしい演目だと思いました。

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